泌尿器科医の徒然日誌

日々思ったこと、医療情報などを綴っています

カテゴリ: key postings

僕は、昨年の3月に大学病院を辞めて三愛会総合病院という「民間病院」に就職しました。

かと言って、大学が嫌だったわけではありません。(いや、むしろとても楽しかったです…。実は、昨日も医局の納涼会に誘っていただき恵比寿で楽しい時間を過ごしてきました)。

>じゃ、なに?

それは、自分自身で勝負したい(清水院長の力も相当お借りしてますが…)。
自分が今まで血の汗をかきながら修行してきた医療を民間病院で行う(いや、日々更に進化させているつもりです)ことをやりたいのです。




イメージとしては民間病院は大学病院などのhigh voleme centerと言われている所と比べると医療の質が落ちると思われがちですが、がん研有明病院や大学病院でやっていた(以上の)ことを三愛会総合病院でやって行く(気持ちを持ち続ける)事が僕の信念です。決して、決して妥協せず、質の高い医療にこだわり続けることを。。。

僕はまだまだ未熟ですのでどこまでできるかはわかりませんが、とりあえずとことん突き進んでいこうと思います

患者さんによく聞かれることがあります。

「その手術は簡単なんですか?」

僕はいつも返答に迷います。

なぜなら、


「どんな難易度の高くないとされる手術であっても、今よりもっとよい方法が絶対ある筈。毎回毎回、”前回よりも
少しでも進化した手術をしなければいけない”と思い、研究し、手術に望んでいる」


からです。

もちろん、患者さんに迷惑がかからない範囲内で改良を重ねているわけですが・・・。

これからも、よりより手術(医療)を、考えて、考えて、考えて、いきたいと思います。

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読者の皆様、いつもありがとうございます。
この一年間、このブログを書いてみて思ったことは、

① 三郷周辺の患者さん向けに発信するつもりで書き始めたのだが、読んでくださっているのはほとんどが医療関係者である
 ⇛三愛会総合病院の宣伝にあまりなっていない…(汗) 

(このブログにはアナライザーをつけていたので、一日のアクセス数、訪問者の訪問元都道府県、検索語句、使用プロバイダー などなどが僕にはわかっていたのでした。もちろん、誰がアクセスしているのか、含め、個人情報は一切わかりません。僕レベルのコンピューター知識では…。僕にはそこまで知る必要も無いですし・・・

② ①であることがわかったため僕自身、<医療ニュース>をそれなりに専門的なものにしてしまった
③ コメントを書いてくださる方が固定している
④ facebookの利用者がこの一年で激増した
⑤ facebookページの方が僕の目的には合っていそうだ。(ブログはどちらかと言うと一方通行、facebookページ気軽にコメントできるので、双方向にコミュニケーションができそう。)

などでした。



と、いうことで、ブログ→facebookページの方向で連動させていこうと思っています。ただし、連動させるものは僕が手動(融通を利かせるためあえて自動にはしません…)で行うので、ブログのほうにも目を通していてだけると幸いです。

ブログの内容に関しては、本来の目的(患者さん向けに発信)を再認識し、ラフな形で書いていこうと思います。
ただ、読者の方の中には <今週の医療ニュース> を楽しみにしてくださっていた方もおられるので、たまにはかたいことも書くかもしれません…。

つまり、メイン:facebookページ、サブ:このブログ でいきたいと思います。

再度、facebookページのURL
http://www.facebook.com/sanaikai.urology


今年度も宜しくお願い致します。

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タイトルの言葉は今年の日本泌尿器科学会総会で東北大学の荒井教授が仰ってた言葉です。
「なるほど。いいフレーズだな」と。思ったので今回使わせていただきます。
(荒井先生の許可は得てないですが…)

このブログは三郷界隈の方々向けに書いているつもりなのですが、複数の泌尿器科医の先生方から「ブログ読んでるよ」という連絡を頂きました。

ということで、今回はちょっとマニアックに…。

僕が以前
「僕が腹腔鏡手術(ラパロ)に手を出さなかった理由」(2011/04/11)
の記事の中で書いた、広範前立腺切除術(=拡大切除術)の直近の摘出標本を載せます。

腹側からの写真はピンボケしてるので直腸側から見たもののみ載せます…。

 泌尿器科の先生、または前立腺全摘も行っている外科の先生、それから(マニアックな)患者さんは通常の前立腺全摘術との違いをわかっていただけると思います。
より根治性を高めるためにデノビエ筋膜を前・後葉とも切除(つまり、摘出後の術野は若干の直腸前脂肪識と直腸筋層が見えてます)してます。精嚢は直腸側からみるとデノビエ筋膜に隠れて見えていません。。。

市中病院でも今まで同様 or それ以上にこだわってやっております。。。

今後もまだまだ、磨きをかけていきます。毎回、試行錯誤し、少しでも技術を進化させていこうとやっています。

「あなたは癌です」

と言われたらあなたは まず 何を考えますか?

「痛くない治療方法がいいなあ。」
「傷が目立たない治療方法がいいなぁ」

と考えますか?

いや、ほとんどの方はそんなことよりも
「自分には死ぬのだろうか?」
「自分に残された時間はどの位あるのだろうか?」
「治す方法はあるのだろうか?」
といったことを考えるのではないでしょうか。

そして、その後しばらくして、自分が癌であることを受け入れた後に
欲を出して「痛みの少ない治療がいい。傷が目立たない方がいい」などと考えるのです。

それでは
「あなたの状態では手術は不可能です。」
と言われたらあなたはどうでしょう?藁をもつかむ思いで何でもいいから治す方法がないかを探し民間療法を含む治療を受け入れるのではないでしょうか。

僕は、なるべく 
「治療(手術)は不可能です」
という言葉を言いたくない。

それが僕が腹腔鏡手術に手を出さなかった理由のひとつです。
新しいものに手を出すよりもまずは既存の方法をより高度な技術でできるようになりたい。
と僕は思ったからです。

つまり、たとえば最近多い前立腺癌(:2002年に天皇陛下が自身が前立腺癌であることを公表しその後手術を受けられた)の理想的な手術適応は「PSA<10ng/ml、Gleasonスコアが7以下、かつT1c-T2bまで」とされており(前立腺癌診療ガイドライン2006年版:日本泌尿器科学会/編 より)その基準を遵守している泌尿器科医が多いのが事実です。しかし、そこには但し書きがあり、「一方、Gleasonスコア8以上、あるいはPSA20ng/ml以上、さらにはT3症例にたいして、あるいは高齢者の局所前立腺癌を前立腺全摘除術の適応外とする理由は証明できない。(中略)もちろん、それらすべてが本治療の適応とならないことは明確であるが、期待余命、QOLなども考慮し対応することが肝要である。(中略)この手術における経験、慣れは治療成績、術後合併症、後遺症に関与している、ことを考慮すると、広範な局所切除と外科的バランスを取ることのできる経験のある泌尿器科医が行うべきであると考えられる。」と明記されています。

これは簡単に説明すると、進行性の前立腺癌であっても訓練を受けてきた、ないしは経験の豊富な泌尿器科医が手術をすることで寛治(または生命予後を伸ばす)させられることができるということなのです。
癌研有明病院、がんセンター中央病院など日本で癌治療の最高峰とされている施設では腹腔鏡手術が導入されていませんがどちらもその 広範切除 を行っています。
僕も、癌研有明病院などの一流の術者のもとで同手術法を学んできましたが、ただ前立腺を摘除するのと、手術成績(癌のコントロール)やQOLにこだわって 広範に 摘除するのとでは難易度も全く変わります。
また、僕は、前述のGleasonスコア・PSA値・Tstage・年齢に関しても、より手術適応を広く設定しています。

また、「痛み」ですが、前立腺全摘術の場合は開放手術では臍下を約10cm前後切りますが、ほとんどの患者さんは翌日から歩いています。麻酔技術の向上により痛みをコントロールすることができますし、そもそもこの切り方は筋肉をあまり切らないので痛みが強くはありません。しかも前立腺癌にかかる方は男性のみです。そんなに傷痕にこだわりますか?

つづいて腎癌ですが、これは開放手術では10cm以上の切開が必要ですが、腹腔鏡手術では数cmの傷がいくつか付くだけ。確かに違いはあります。ただ、腎癌でもより大きく悪い部分を取り除くには開放手術のほうが適しています。ただし、早期の腎癌で若い女性(特に未婚)であれば僕も腹腔鏡手術をお勧めするかも知れません。それは、そのような患者さんにとっては腹腔鏡手術のほうがベターであると思うからです。


以上、長くなりましたが、結論としては癌は死につながり得る病気です。
だからこそ、一時の痛みや傷の大きさよりも自分の命のことを考えていただきたいし、僕も追求していきたいのです。

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