泌尿器科医の徒然日誌

日々思ったこと、医療情報などを綴っています

ブログを読んでいただていてる皆様

私事で大変恐縮ですが、実は実父が急死したためブログの更新が遅れております。
5/9からは私自身、気持ち戻して通常業務に戻る所存です。

今後とも何卒よろろしくお願いいたします。

2011/05/28(土)に当院の近くで市民公開講座を開く 予定 をしていますが、まだ結構先なので、今日は、泌尿器科の紹介をしようと思います。

皆さんは泌尿器科医というと
「おしっこの先生」
「おちんちんの先生」
といったイメージがあるかと思います。

実はかくいう僕も、学生時代は外科に行こうと思っており、泌尿器科には全く興味がなかったので、「泌尿器科ってなにするの?」と思ってました(泌尿器科の授業にもほとんど出ていなかったので…)。

では 「泌尿器科医ってなにするの?」

それは、「おしっこの先生」に近いと言われれば近いのですが、「おしっこの通り道にできる病気を治す医者」というのが大まかな回答でしょうか(厳密にはちょっと違うのですが…)

つまり、
① 腎臓(血液が濾過されて尿ができるところ)
② 尿管(濾過された尿を膀胱に運ぶ管)
③ 膀胱(尿の貯蔵タンク)
④ 前立腺(尿の通り道)
⑤ 尿道(尿の通り道)

です。それに加えて
⑥ 副甲状腺
⑦ 精巣
⑧ ペニス
⑨ 上記の付属物

などにできる 癌を含めた病気 をまとめて診ます。(腎臓に関しては腎臓内科の先生に頼むような病気もありますが)

さらに細かく言うと
腎臓:癌、炎症(腎盂炎など)、結石など
尿管:癌、炎症、結石など
膀胱:癌、炎症(膀胱炎など)、結石、脱など
前立腺:癌、肥大症、炎症など
精巣:癌、炎症、捻転症、停留精巣
陰茎:癌、包茎、ED(以前インポテンツと言われていたもの)、性機能障害
などなど、それなりに沢山あるのです。

別に、僕らは おしっこ と ちんちん ばかり見ているわけではないんですよ(笑)。
実際、僕も専門(研究テーマ)は 泌尿器がん ですし…。

5月の公開講座の時にはもう少し込み入った内容を 老若男女 全世代を対象に話したいと思いますので、ぜひご参加ください。

最後に、脅すつもりはありませんが下記のチェックしていますか?

男の子を育ててらっしゃる方:
・精巣はちゃんと陰嚢に納まってますか? (停留精巣など)
・包茎は大丈夫ですか? (包茎は陰茎癌・炎症を起こす確率が上がります)

女の子を育ててらっしゃる方:
・膀胱炎を繰り返したりしていませんか? (膀胱尿管逆流など)

若い男性:
・包茎は大丈夫ですか?(包茎は陰茎癌になる確率が上がります)
・精巣が固くなっていたり、たまに痛みが出ることはありませんか? (精巣腫瘍、精巣捻転など)
・ED・性機能障害は大丈夫ですか? (EDの頻度は成人男性の5~20%とされ,わが国の疫学調査では中等度および完全EDを合わせた患者数は1,130万人と推定されています)

若い女性:
・膀胱炎を繰り返したりしていませんか? (繰り返す場合には原因疾患が隠れてる場合があります)

中年以降の男性:
・PSA(前立腺癌のマーカー)のチェックはしていますか? (三郷市では65歳以上の方は無料でPSA検診が受けられますが、50歳以上はPSAチェックを受けるべきであり、また、前立腺癌は遺伝性があるためアメリカでは家族に前立腺癌がいる人は40歳または45歳からのPSA検診が推奨されています)
・超音波検査やCTなどを定期的に受けてますか? 腎癌などは血尿・痛み・しこりなどが出現した時点では進行していることがほとんどです。また、血尿があったりしたら腎盂癌・尿管癌・膀胱癌も考えられます
・排尿障害はありませんか? (前立腺肥大など)

中年以降の女性:
・膀胱炎を繰り返したりしていませんか? (繰り返す場合には原因疾患が隠れてる場合があります)
・超音波検査やCTなどを定期的に受けてますか? 腎癌などは血尿・痛み・しこりなどが出現した時点では進行していることがほとんどです。また、血尿があったりしたら腎盂癌・尿管癌・膀胱癌も考えられます

などなど…。

心配な方は是非一度泌尿器科にいらしてください。

※2011/05/28(土)の公開講座に関しては詳細が決まり次第このブログでも告知しますが、
できれば参加者の方々の大まかな人数を把握しておきたいので、当院にご連絡の上、参加希望と伝えていただけると幸甚です。(医療法人三愛会 三愛会総合病院 TEL/ 048-958-3111)

「あなたは癌です」

と言われたらあなたは まず 何を考えますか?

「痛くない治療方法がいいなあ。」
「傷が目立たない治療方法がいいなぁ」

と考えますか?

いや、ほとんどの方はそんなことよりも
「自分には死ぬのだろうか?」
「自分に残された時間はどの位あるのだろうか?」
「治す方法はあるのだろうか?」
といったことを考えるのではないでしょうか。

そして、その後しばらくして、自分が癌であることを受け入れた後に
欲を出して「痛みの少ない治療がいい。傷が目立たない方がいい」などと考えるのです。

それでは
「あなたの状態では手術は不可能です。」
と言われたらあなたはどうでしょう?藁をもつかむ思いで何でもいいから治す方法がないかを探し民間療法を含む治療を受け入れるのではないでしょうか。

僕は、なるべく 
「治療(手術)は不可能です」
という言葉を言いたくない。

それが僕が腹腔鏡手術に手を出さなかった理由のひとつです。
新しいものに手を出すよりもまずは既存の方法をより高度な技術でできるようになりたい。
と僕は思ったからです。

つまり、たとえば最近多い前立腺癌(:2002年に天皇陛下が自身が前立腺癌であることを公表しその後手術を受けられた)の理想的な手術適応は「PSA<10ng/ml、Gleasonスコアが7以下、かつT1c-T2bまで」とされており(前立腺癌診療ガイドライン2006年版:日本泌尿器科学会/編 より)その基準を遵守している泌尿器科医が多いのが事実です。しかし、そこには但し書きがあり、「一方、Gleasonスコア8以上、あるいはPSA20ng/ml以上、さらにはT3症例にたいして、あるいは高齢者の局所前立腺癌を前立腺全摘除術の適応外とする理由は証明できない。(中略)もちろん、それらすべてが本治療の適応とならないことは明確であるが、期待余命、QOLなども考慮し対応することが肝要である。(中略)この手術における経験、慣れは治療成績、術後合併症、後遺症に関与している、ことを考慮すると、広範な局所切除と外科的バランスを取ることのできる経験のある泌尿器科医が行うべきであると考えられる。」と明記されています。

これは簡単に説明すると、進行性の前立腺癌であっても訓練を受けてきた、ないしは経験の豊富な泌尿器科医が手術をすることで寛治(または生命予後を伸ばす)させられることができるということなのです。
癌研有明病院、がんセンター中央病院など日本で癌治療の最高峰とされている施設では腹腔鏡手術が導入されていませんがどちらもその 広範切除 を行っています。
僕も、癌研有明病院などの一流の術者のもとで同手術法を学んできましたが、ただ前立腺を摘除するのと、手術成績(癌のコントロール)やQOLにこだわって 広範に 摘除するのとでは難易度も全く変わります。
また、僕は、前述のGleasonスコア・PSA値・Tstage・年齢に関しても、より手術適応を広く設定しています。

また、「痛み」ですが、前立腺全摘術の場合は開放手術では臍下を約10cm前後切りますが、ほとんどの患者さんは翌日から歩いています。麻酔技術の向上により痛みをコントロールすることができますし、そもそもこの切り方は筋肉をあまり切らないので痛みが強くはありません。しかも前立腺癌にかかる方は男性のみです。そんなに傷痕にこだわりますか?

つづいて腎癌ですが、これは開放手術では10cm以上の切開が必要ですが、腹腔鏡手術では数cmの傷がいくつか付くだけ。確かに違いはあります。ただ、腎癌でもより大きく悪い部分を取り除くには開放手術のほうが適しています。ただし、早期の腎癌で若い女性(特に未婚)であれば僕も腹腔鏡手術をお勧めするかも知れません。それは、そのような患者さんにとっては腹腔鏡手術のほうがベターであると思うからです。


以上、長くなりましたが、結論としては癌は死につながり得る病気です。
だからこそ、一時の痛みや傷の大きさよりも自分の命のことを考えていただきたいし、僕も追求していきたいのです。

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