泌尿器科医の徒然日誌

日々思ったこと、医療情報などを綴っています

「あなたは癌です」

と言われたらあなたは まず 何を考えますか?

「痛くない治療方法がいいなあ。」
「傷が目立たない治療方法がいいなぁ」

と考えますか?

いや、ほとんどの方はそんなことよりも
「自分には死ぬのだろうか?」
「自分に残された時間はどの位あるのだろうか?」
「治す方法はあるのだろうか?」
といったことを考えるのではないでしょうか。

そして、その後しばらくして、自分が癌であることを受け入れた後に
欲を出して「痛みの少ない治療がいい。傷が目立たない方がいい」などと考えるのです。

それでは
「あなたの状態では手術は不可能です。」
と言われたらあなたはどうでしょう?藁をもつかむ思いで何でもいいから治す方法がないかを探し民間療法を含む治療を受け入れるのではないでしょうか。

僕は、なるべく 
「治療(手術)は不可能です」
という言葉を言いたくない。

それが僕が腹腔鏡手術に手を出さなかった理由のひとつです。
新しいものに手を出すよりもまずは既存の方法をより高度な技術でできるようになりたい。
と僕は思ったからです。

つまり、たとえば最近多い前立腺癌(:2002年に天皇陛下が自身が前立腺癌であることを公表しその後手術を受けられた)の理想的な手術適応は「PSA<10ng/ml、Gleasonスコアが7以下、かつT1c-T2bまで」とされており(前立腺癌診療ガイドライン2006年版:日本泌尿器科学会/編 より)その基準を遵守している泌尿器科医が多いのが事実です。しかし、そこには但し書きがあり、「一方、Gleasonスコア8以上、あるいはPSA20ng/ml以上、さらにはT3症例にたいして、あるいは高齢者の局所前立腺癌を前立腺全摘除術の適応外とする理由は証明できない。(中略)もちろん、それらすべてが本治療の適応とならないことは明確であるが、期待余命、QOLなども考慮し対応することが肝要である。(中略)この手術における経験、慣れは治療成績、術後合併症、後遺症に関与している、ことを考慮すると、広範な局所切除と外科的バランスを取ることのできる経験のある泌尿器科医が行うべきであると考えられる。」と明記されています。

これは簡単に説明すると、進行性の前立腺癌であっても訓練を受けてきた、ないしは経験の豊富な泌尿器科医が手術をすることで寛治(または生命予後を伸ばす)させられることができるということなのです。
癌研有明病院、がんセンター中央病院など日本で癌治療の最高峰とされている施設では腹腔鏡手術が導入されていませんがどちらもその 広範切除 を行っています。
僕も、癌研有明病院などの一流の術者のもとで同手術法を学んできましたが、ただ前立腺を摘除するのと、手術成績(癌のコントロール)やQOLにこだわって 広範に 摘除するのとでは難易度も全く変わります。
また、僕は、前述のGleasonスコア・PSA値・Tstage・年齢に関しても、より手術適応を広く設定しています。

また、「痛み」ですが、前立腺全摘術の場合は開放手術では臍下を約10cm前後切りますが、ほとんどの患者さんは翌日から歩いています。麻酔技術の向上により痛みをコントロールすることができますし、そもそもこの切り方は筋肉をあまり切らないので痛みが強くはありません。しかも前立腺癌にかかる方は男性のみです。そんなに傷痕にこだわりますか?

つづいて腎癌ですが、これは開放手術では10cm以上の切開が必要ですが、腹腔鏡手術では数cmの傷がいくつか付くだけ。確かに違いはあります。ただ、腎癌でもより大きく悪い部分を取り除くには開放手術のほうが適しています。ただし、早期の腎癌で若い女性(特に未婚)であれば僕も腹腔鏡手術をお勧めするかも知れません。それは、そのような患者さんにとっては腹腔鏡手術のほうがベターであると思うからです。


以上、長くなりましたが、結論としては癌は死につながり得る病気です。
だからこそ、一時の痛みや傷の大きさよりも自分の命のことを考えていただきたいし、僕も追求していきたいのです。

三郷に移って一週間が過ぎました。
まだ医療自体は忙しくありません(むしろ患者さんがいないので暇です)が、暇なうちに事務的なことをやってしまおうと走り回っていたのでこの一週間結構疲れました。今日は当院で行う医療についてご紹介したいと思います。

基本的には大学病院レベルの医療を三郷の方々に提供する、というのが僕のコンセプトですが、いきなりなかなかそうもいかないとはおもいます。

そこで、とりあえずは、
①難易度の高い小児泌尿器
②専門性の高い女性泌尿器
③腹腔鏡手術
以外は極力やっていきたいと思っています。

それから、以下のことにもこだわっていきたいと思っています。

④なるべく痛くなく、辛くなく、ということにこだわる。

つまり、たとえば健康診断で前立腺がんの疑いと診断され、前立腺の生検を受けられた経験のある方も多いかと思いますが、あの検査痛いですよねぇ。当科では麻酔をかけて検査するので、検査時の痛みは麻酔をしないのとでは雲泥の差です。また、通常は麻酔をかけないでやってしまうような検査でも極力麻酔をしっかりかけて行いたいと思います。今後、患者さんがすごく増えたらそれができるか何とも分かりませんが、可能な限り痛くなく、辛くなくを忘れずに行って行きたいと思っています。

⑤患者さん、ご家族の意見を尊重する。

つまり、医療の主役は患者さんご自身です。僕らは病気と闘う患者さんのお手伝いをするに過ぎません。ということで、すべては到底無理ですが、可能な限り主役の意見を尊重し医療を進めたいと思っています。

⑥道具にこだわる

つまり、一流の医療をするには医師の知識・技術は固より、道具(道具の存在の知識)も大切です。今回、当院には大学病院に引けを取らないくらいの道具を導入しました。

また、新しい類の手術方法としてはHoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)も行います。
これは前立腺肥大症に対する手術方法で、ホルミウムレーザーを用いた内視鏡下の前立腺核出術です。今まで前立腺核出術は、おなかを開けて被膜下摘除術という方法を用いて行われていました。HoLEPは従来、開放手術が選択されるような大きな前立腺肥大症例に対しても内視鏡下に施行できるもので、有用性が高く、開放手術に替わる minimum-invasive surgery (小皮切・小侵襲な手術) として注目を集めています。さらに入院期間が短縮される点でも普及しつつある治療です。実際アメリカをはじめ、海外では主流になっており国内でも保険適応です(実施している医療機関は、2008年9月現在全国で約80施設です)。

以上、当院泌尿器科の簡単な紹介でした。

近々、当院界隈で公開講座も開いていく予定ですので、是非ともご参加いただけると幸甚です。

次回は、最近流行りの「腹腔鏡手術」を僕がなぜやらないのか。について書こうと思います。学ぶチャンスは幾度かありましたが、僕が敢えて手を出さなかった理由を書きます。。。

昨日は三愛会総合病院での初日だった。僕は、一日外来であったが、来院患者さんはなんと2人!
ま、これからどんどん患者さんが来てくれるようにすればよい。
それには、(今まで通り)自分の親族を診るつもりで丁寧な医療を続けなければ。。。

本当は昨日ブログを書くつもりでいたのだが、インターネットがつながらない環境だったので、今日書きました。


それでは、三郷の皆さんよろしくお願いします。

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